鯖味噌を頼んだはずだ

この映画は
独特の撮影の仕方で
少年たちの春から
秋にかけての出来事を
たまに思い出すのだが、たぶん
今よりもっと釘の出方が
よかったんじゃないかと思って
もう少しじっとしていれば
歩いている地面が
時速八〇キロで上空
徒歩 五分って書いてあるのに
昨日何食ったかも
あんま思い出せないし
今朝食ったコンビニ弁当の中身が
殺すぞ
みたいな顔で歩いていて
目的地が同じなら
安く上がるなあとか思って
やっぱり店にすれば
よかったんだろうけど
断りもなく店員が
かつ煮定食を持ってきてくれた
忘れている
ということかな
いや、たぶん割り箸まで食ったから
人ではないものが
夢中でお互いを食べ合っている
だってさあ
割り箸にもカロリーがあるかとか
調べなくても分かることだし
ここから
もう少し歩いたところに
上手くやれるなら
そういう人だけでできている列を
頭から食うのが通なんですよ
とか人ではないもの
なんだか変な方向で君が出てきてしまったよ
結局 この映画のオチも
だいたいそうだしね

家に帰ろう

家に帰ろう


家に帰ると父親の
ぺニスが大きくなりはじめた。
一日目は曇り空だ。
洗濯物が乾かずに
今日は外へ飛び出し、その中でも
ここ2、3日続いている
これが私たちの着ている
ビニール袋にも利用されるのです。
取っ手のところに
ここがスイッチで、ここが回転します
巻き込んでどんどん大きくなる
もっと大きくなったら
人のためになる仕事をしたいです
だから、そういうことも含めて
したいんだなって思ったし、これからは
衣服についた場合は速やかに
全部溶かそうとしているうちに
この家の人ではなかったのだということに。
ここどこらへんの肉なんです?
窓際に置いてたら
悪くなるんじゃないかって
まあ、はじめから悪い人なんていないから
何が悪いのかそうでないかが
水に2、3滴たらして使えばいいのだという。

奇遇じゃん

奇遇じゃん


お前どうせ溶けないでしょ
写真を見せて
もつ煮を頼んだら
レバーしか入ってなかった
顔をした人が同僚だよ
みたいなこと言うから
カレー食いたいと思って
地雷だったよね
昨日は部屋中のゴミを
鍋でもしようかな
と思ったら
糸引いてたし、もう駄目なんじゃないかって
買い物行ってたね
まあ、最近天気良くなかったから
良かったし
無理してる
ってよく言われるけど
言われてみれば
あんま言わないようにしてることとか
名前だけなら聞いたことあるよ
最低でも
こぼれてる件については
持ち運べる柵って便利じゃん系の
呪われてる感じ?
みたいな感じでお願いしますって
言ったら言ったで
これだもんな
まあ、向こうは向こうで
中にいるから
自分でやりゃいいとは思ってたけど
昨日やったからなあとか
端的に便秘ですね
とかそういう診断
まさか犬が家出した話から
皆さん家出ってどう読みます的な
あと5ミリ右にずれてたら
おれ硬いの無理なんだよね
どっちかを選ぶとしたら
ここに来てあの柵のダメージが
誰だお前
っていきなり
後ろを気にしだしたのは
それ以来
中間で腹が減ったな

(初出『トイレ』vol.1)

玉音

玉音

ぎょくおーん
とはたいそう淫靡なかがやき
甘いテトラポッドの上の
出離の巨人
の胴体
開花
「わたしです」
わたしとおんなじ名前の魚が
うようよしていてさ
「釣れますか」
「釣られました」
ぎょくおん、ぎょくおん
とは
そんな魚群の断末魔
むらむらとわきあがり
地の吐き気が(ぬっ)
土壌の顔、とやらを暴きにかかるのだろう
「今日は暑いのかもしれない」
赤茶けたクリシェのプールのなか
るびを砕いて
さらなる流亡を十二指腸の寅の文様に描き出す
巡回しているこの血の飛沫り様は
しばらく前、妻に手をひかれ
それとひとしい速度で轢かれる
自動詞、を見た
腸の首がもずくにまみれているとして?
己の立つべき遅鈍、域をなぞり
肉の肌理を切り分けてうろたえていく
擬音のかいぶつにゆくてを阻まれて、

死ぬのはいやかい?
答える顎も墨でつぶされ
地べたに頬こすりつけて円舞をかきならす(またね)
出かかって。
塞栓にまみれた紋切りの痛みなんて
あいさつの歯車に絡みやしないし
だから
毎日そのように起きたり
無喩のひらけた場所を好むブラックバード
下血のサエズリ、ぎょこぉん
とは
突然すりむいた逐語の裏側
さざめく絵の中身が
ぼろっ
と取れたりして
ひらいてみると病巣は
拾っても拾ってもぬけ落ちて
湿潤する母語、ちらちら
蛇の目に口説かれたいいやな股がいつまでたってもくだっている。
底の方ともなれば
角が取れても毛羽立ったまま
卵割に塩をぬり
鰓からこぼれおちるフォルムひとつ
「ここはきらいだ」
「もっとぴんとした大陸だった!」
どなる虚仮
とは
わびしい信仰
めくってもめくっても不具はかたむくから
花のうえにすわる子どもたち、手をとりあって
玉の音を咲かせていた

(初出『カマキリ』0号)

記憶に残る

記憶に残る


肉がさな、さなぎが生えている道が、這う、ことを知っている。するに、トークする、誰かとあなたは知っている。人の手は人のフォルムを小さくする。くすぶる、られたソーセージを食べる。暗い色のソーセージを食べる。犬が見ている。ソーセージの暗い色は犬にやった。耳にした。耳にしたものを口にもした。これからもずっとそうしてきたのだし、これまでもずっと思うことは

見ているとああ、でも、もしかしたら、ふだん、きちんと見ていないその後ろ姿だったのかもしれないと、感じる気配に一瞬おどろいた彼は、まともな暮らしをちゃんとしてこなかったせいでこんなふうになっちゃったんだろうなあ、君は短大を出て、楽器をつくる工場に勤務する。傍ら一人で町へ出て、ちゃんとやっていけるか心配なんだ。割合よく見受けられるためにならない話ばっかするやつっているけどさ、たったひとつでいいから人に誇れることを、と言っていたこれまでもずっと雨だったし、歩くのはもう無理でしょうね。赤いカーテンが引かれている。

それはもっと大きかったような気もするし、もする。身近にあるからです。でも、身体には良くないの病院から同時に三件もの発信を受け、年に三件はこうした発注を受けるけれ、たれたのだけれどさん、あなたはたしかにたしかめあった、ええ、間違いなく偽物ですね。悪いけどお前はぜんぜん悪くないよ。殺される理由なんか、あるわけがない。「じゃあ、なぜ打ち切った方は先に受付カウンターまで、なんだけど、そう言われてもって、言って、駄目だった時はいつも

今年の暮れは工事現場が道を削っているのでしょう?トイレに座れば誰でもする。的なトークする内容器に入っていた液体だったし子供なのかも、飼ってやる理由なんて、それぐらい。たまに餌をやればいいし、海の水を取り替えればまあ、よかったらの話なんですけどね、ですけど、これまでの重苦しい静けさを打ち破るかのごとく、別に用意された皿の中から任意の一枚を打ち破るかのごとく、くそったれ! 少年時代の末期から初めにかけて大きく変化していく流れ

も、きっとそうだったということだけが食べるふくらむ暮らしの中で気づいたことや、なことがあっても多くの人は我慢の限界っつーか、胸がいっぱいでお腹空かないみたいな退屈がつきだされる記憶をたよりにラジオと声の「アララララ!」不気味な叫びが「メディア!」まあ、もちろん私もそうでしたし私ですたし這う、難しく考える。これは、方向を得ようとする試みでした。これは、誰の遺体として処理すればいいのか……ぼくには(に)覆われた、硬い殻の中に入った身を聞いていたので聞いていたい

全身を強く打ち、全身を耳にしながらがらという音を立てて鳴らす楽器を弾いていた。それがほとんどでしたし、だから仕方ないというか、なんていうから私、えっ、だけどさ、慣れてる人ってダメっていうかさ、君には話そうと思ったんだよ? でもさ、それなのにも関わらず置いていかれた子供たちは線路に沿って歩きだし、再び町を目指す。そうした弾圧をドキュメンタリー形式で描く。彼がとくに強調するのは、顔をアップで映し出すことで、他方には密かに手渡されるメモ。

河原に作った秘密基地の中で友だちがたくさんいたし、成績もそれほど悪いというわけで逮捕された国民の中で、その無実が明らかであるにも関わっていられるほど暇じゃないと言われたので、無数の折れ曲がりを持つ路地のなかでは今日も誕生を祝う人たちで大賑わいです。悲しむ人は間違いですのでこれでいくらするか知ってた? 危険性が高い。

カレンダー

カレンダー


あれさ、
なんて言うのかわかんないんだけど
今晩ぐらいは
センター試験の1週間前に
貯金おろしてホテルに泊ったんだけど
明日には帰った方がいいよ
そん時はわりとマジかよってぐらい
雪が降っていて
3日後には止んだんだけど
昨日まで夏だったんじゃないかなって
カレンダー見たら
今日は18度ぐらいあるし
過ごしやすいよね
まあ、それでも来週は
またこの町で
つつがなく人色のものを考えて
やり過ごしてきたし
高木さんが3番テーブルで
すごいポーズで
横になっていて
たぶん
伝票をあそこに刺すんだろうけど
棚の上にあるやつは勝手に持ってっていいよって
小さい方の親父に言ったら
このうたで年をとるのも
もうじきやめにしないといけないな


(初出 『カマキリ』1号)

アルバム

アルバム


ずっと昔の思い出が
小学生の時だったかな
野球やってて
おれのパソコンだと
一発変換
されないから
日付通り、明日から
この部屋が人のものになる
言葉の上では、とか
そういうことではなく近頃
ひどい顔で歩いている女が増えていて
男女比が去年よりもずっと
さっきは
暦の上では、と言おうとしていた
この口のことなんだろう?
でも、違うなら買い足せばいいとか
そんな簡単な話じゃなくて
量より質の問題だった時代があって
みんな1行のことについて
映画のようにはやっていけない
ことばかり続いていて
15時で
待ち合わせをしていたはずなのに
寝て起きたら
なんで昨日のことになるのかな
つまり、今のうちにやっておこうとしていたものが
お前の手拍子が適当だから
量より質の問題だった時代も今も
皆迷惑してるし
学校に大きいも小さいもあってたまるかって
火の海に次々と飛び込んでいく授業。
背中にはりついた担任の顔で
この部屋がいったい何年度の卒業生か
当ててあげようか?

(初出 『カマキリ』1号)