あかるいうちから夜になる

ふたご山は遠く
花火を野宿した
まな板にした体の上を
色とりどりの電車が横切っていくこの窓は
あかるいうちから
夜になる

そのことを町と呼んだとき
川に溶けていく昔
お世話になった遠藤さんが
泣いていた こわい牛を見て泣いたんだって
その牛の声は
こだまになって
ぬりつぶしたような影が落ちてくる
本当はずっと家がこわい
おおよそ
家と呼べるものがあるのなら
ひざでもないところから垂れてくる水で
すすいだ顔が
昼間の川を流れていく表面は
ふろしきのような町を
つつみこむ空が横切っていく

記憶ですむなら
おぼえておく必要なんてないんだよ 遠藤さん
りっぱな肉を身につけて
川上からやってくる
この風があたらしいんだよ あの顔も
鳴り響いているのがわかるでしょ
駅のちかくで
おおきな花火の打ち上げがあって
しかるべき場所にしかるべき石がおかれているのだ
たぶん 帰ろうとおもう場所に
家を建てるのだ