川のお父

おまえのあき地を荒らす草の線、わたしを通せんぼする 雨の線とがいり交じる点に立つ まるい地蔵 あれは見えていいはずのない、埋められたことへの怒り 匂いたつ吐息そのものよ川のお父のシャベルもつ手がふうじこめたもの 掘り起こされた具合を踏みかためて…

匂い(2013、2008、2011)

お前が蟹を食ってきたことは匂いでわかる 匂いは、物の影から立ち上るのでない。ツナぎ目が こすれ合う音を 感じ取ろうとする鼻に付着する。筋肉の粉の ようなものだよ まさひさんが家だったものを ひっくり返し、赤いペンキでバッテン描いて 日が暮れる朝方…

あかるいうちから夜になる

ふたご山は遠く 花火を野宿した まな板にした体の上を 色とりどりの電車が横切っていくこの窓は あかるいうちから 夜になるそのことを町と呼んだとき 川に溶けていく昔 お世話になった遠藤さんが 泣いていた こわい牛を見て泣いたんだって その牛の声は こだ…

眠れ

道ばたの雪がまだ 残っていたひとを 忘れないように摘み取っていく大丈夫、今日も旅館でいられた 顔洗うひと、ねむいひと ねたいねたいと言うひとを 箸でつまんだ 腰の骨 ふとんなら へやの裏にある みたこともない場所をすこし壊した こうした努力が 手の鳴…

木製の悪霊

風習で絵を描いて! 娘がはじめて口にした音を 口にした 洗濯物を取り込むように 痙攣しているだけでよかったおかしなことに 義足を食べて生き延びた わたしたちが 実話だけで歩いていた頃は 死んでしまった 自分たちを整理するために ひとの時制を暗記しよ…

しぶとい人

もう少し だれとでも仲良くやれる方法だけを 信じている。要するに 病院で死んだ いちばんしぶとい人を数えるために 音をたてている この肺は 噛んでも苦い味しかしない どさ回りを繰り返してばかりの草むらで 私たちは 好きで面白いことをしているわけでは…

拝島

拝島昨日の夕方の話、私は十二歳の頃の私と出会った。でも話で聞くよりかは全然なつかしいとか悲しいとかなくて、むしろ拍子抜けして、というよりかはまるで気が付かなくて、今も気付いてない。気付いていたら何か思うこともあったはずなのだ。案外ちゃんと…

私は友だち

私は友だち死ぬ前も遠足の味がした。「やっぱり そうだったよなぁ」みたいな味なんだと思う 友だちは中腹の森をしらべていた。思っていたより ずっと大きな 足の方から 友だちの服を脱がせている写真。ああ、 この気持ちを 練習していた。私が友だちではなく…

私のパン

私のパン役場の裏に住んでいたシゲユキさん。ちいさい私は 宿題をやってもらうたびにパンをあげていた。 その様子を いつも林の影から じっと見ている人がいた。あの人は うらやましかったんだと思う。 シゲユキさんが倍に膨れて死んだ。それからは 林の人に…

床屋

床屋「悪いけど 当店にはセンスがあります」 ほんとかな。 みたいな看板につられて 全体的に3センチくらい短くして 面影だけ残してください そう言ったのに 明らかに前よりも 長くなっていた あの店主は 昔は陸上をやっていたという 水中でやっていた オレ…

私を繁栄させるには

私を繁栄させるには市場でとれた、新鮮な 長い夫婦が肉を食べている 緑色の獣になっている 二人はガムテープで貼った関節に 生まれてくる子どもの 住む場所をつくろうと思い ツノの厚みや 皮膚の色が イヤな音のする肉を食べている 音を立てて食べないで 隣…

レミニセンス

昔見た映画に出てきたような道 の上に落ちていた服を着て どうかなとか言われておれは 今晩の夕食について母親の 人の目を見て話そうと 思ったよりも 電話口の声が聞き取れないことが 外に出ていたからかな 流れ的にはもしかしたら 魚が出るかもしれない そ…

不具合

明日から骨格をきれいに打ち上げている 残りの音と話していたのだが ここからだと思い、舌の上の耳に行く 走り回るだけになった私が 足音になってしまったものたち 浜辺で おどる私は中身が 落ちていた服を脱いだら 失う指を代わりに使ってみることだ 葉で葉…

ベル

騒ぎの上にかけられた ポリエチレンの、青いシートに溜まる唾 早朝の駅は流れを 避けているビルが 咳込むたびにしないでいる ベル、私はそういった絵画を 好きでよく焼いて 食べている群れの間を通るには 傷を記憶しない動きで しるしをいたんだ祈りになって…

鯖味噌を頼んだはずだ

この映画は 独特の撮影の仕方で 少年たちの春から 秋にかけての出来事を たまに思い出すのだが、たぶん 今よりもっと釘の出方が よかったんじゃないかと思って もう少しじっとしていれば 歩いている地面が 時速八〇キロで上空 徒歩 五分って書いてあるのに …

家に帰ろう

家に帰ろう 家に帰ると父親の ぺニスが大きくなりはじめた。 一日目は曇り空だ。 洗濯物が乾かずに 今日は外へ飛び出し、その中でも ここ2、3日続いている これが私たちの着ている ビニール袋にも利用されるのです。 取っ手のところに ここがスイッチで、…

奇遇じゃん

奇遇じゃん お前どうせ溶けないでしょ 写真を見せて もつ煮を頼んだら レバーしか入ってなかった 顔をした人が同僚だよ みたいなこと言うから カレー食いたいと思って 地雷だったよね 昨日は部屋中のゴミを 鍋でもしようかな と思ったら 糸引いてたし、もう…

玉音

玉音ぎょくおーん とはたいそう淫靡なかがやき 甘いテトラポッドの上の 出離の巨人 の胴体 開花 「わたしです」 わたしとおんなじ名前の魚が うようよしていてさ 「釣れますか」 「釣られました」 ぎょくおん、ぎょくおん とは そんな魚群の断末魔 むらむら…

記憶に残る

記憶に残る 肉がさな、さなぎが生えている道が、這う、ことを知っている。するに、トークする、誰かとあなたは知っている。人の手は人のフォルムを小さくする。くすぶる、られたソーセージを食べる。暗い色のソーセージを食べる。犬が見ている。ソーセージの…

カレンダー

カレンダー あれさ、 なんて言うのかわかんないんだけど 今晩ぐらいは センター試験の1週間前に 貯金おろしてホテルに泊ったんだけど 明日には帰った方がいいよ そん時はわりとマジかよってぐらい 雪が降っていて 3日後には止んだんだけど 昨日まで夏だっ…

アルバム

アルバム ずっと昔の思い出が 小学生の時だったかな 野球やってて おれのパソコンだと 一発変換 されないから 日付通り、明日から この部屋が人のものになる 言葉の上では、とか そういうことではなく近頃 ひどい顔で歩いている女が増えていて 男女比が去年…

親の話はやめろ

親の話はやめろ 狂暴なバスガイドにぶつかった日のことは 最終的に誰でもなかったと思うんだ それなのに 顔見たら1発だよ みたいなことが書いてあって テレビで言ってた でもさあ普通右から来たら 来週見た映画はやばかったよね 一生ジャンプしてるつもりか…

思っていたのと違う

思っていたのと違うあそこで動かなくなってるやつがいて 全部おれの布団だ 今日はもう限界にして 明日にしようかな と思ったのが ちょうど去年の今頃で 具合が悪い とくに 足の先が君のなんじゃないかなって 取り替えてみたんだけど あたり一帯が2で割り切…

記憶に新しい

記憶に新しい誰かの何かを読んでいたら 混ざってしまった と言った方が近い出来事は 目のやり場に困った その前に片づけろよな そこらへんに落ちていた 首がすわっていないものに 100円を入れてみると 動きが面白かったことを今回は 点線に沿って字が書い…