2014-01-01から1年間の記事一覧

川のお父

おまえのあき地を荒らす草の線、わたしを通せんぼする 雨の線とがいり交じる点に立つ まるい地蔵 あれは見えていいはずのない、埋められたことへの怒り 匂いたつ吐息そのものよ川のお父のシャベルもつ手がふうじこめたもの 掘り起こされた具合を踏みかためて…

匂い(2013、2008、2011)

お前が蟹を食ってきたことは匂いでわかる 匂いは、物の影から立ち上るのでない。ツナぎ目が こすれ合う音を 感じ取ろうとする鼻に付着する。筋肉の粉の ようなものだよ まさひさんが家だったものを ひっくり返し、赤いペンキでバッテン描いて 日が暮れる朝方…

あかるいうちから夜になる

ふたご山は遠く 花火を野宿した まな板にした体の上を 色とりどりの電車が横切っていくこの窓は あかるいうちから 夜になるそのことを町と呼んだとき 川に溶けていく昔 お世話になった遠藤さんが 泣いていた こわい牛を見て泣いたんだって その牛の声は こだ…

眠れ

道ばたの雪がまだ 残っていたひとを 忘れないように摘み取っていく大丈夫、今日も旅館でいられた 顔洗うひと、ねむいひと ねたいねたいと言うひとを 箸でつまんだ 腰の骨 ふとんなら へやの裏にある みたこともない場所をすこし壊した こうした努力が 手の鳴…